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いろはにほへと
第4章 月謝は体で

お吉との逢瀬は
週に2,3度の割合で交ぐあった。

今ではすっかりおめこの虜になり、
お吉は腰使いもかなり上達した。


今夜も夕餉の支度をしてくれた後で
おめこをするつもりだったが
寺子屋の終業を告げる鐘を鳴らし、
童を帰らせた後に珍しく来客があった。


「あなた様はどちらの方かな?」

年の頃は三十路半ばの
所帯やつれした女人であった。

「先生様にはいつもお世話になっております…
次郎太の母でございます」

おお、そういえば面影がある。

そうでしたか、次郎太の母君とな…


して、どのような用件でしょうか?

次郎太の母はモジモジしながら
言いにくそうだったが、
やがて意を決したように話し始めた。

「他でもない、月謝の事なんやけど…」

要は月謝の滞納の謝りだった。


「良いですよ。
来月にでもまとめていただければ…」

「それが…来月はおろか、
再来月まで待ってもらえんやろか?」

次郎太の畑は水捌けが悪く、
先日の雨で作物が全滅してしまったのだそうだ。

「ううむ…ふた月も滞納とな…」

ほんとはお吉と密通するようになり、
お吉が自宅から
こっそりと食材を持ってくるので
食うに困らぬ状態だったから滞納されても
いささか困らぬ状態だったが、
このような前例を作ると
我も我もと滞納する親が出て来るのが怖かった。

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