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いろはにほへと
第5章 小僧と小娘の戯れ

「何?病とな?」

「うん、そうやねん。
あの子、白い小便を漏らしよってん」

白い小便と聞いて
急ぎ足で駆けていた歩調を緩めた。


「ははは…あはははは…」

「先生様!笑い事じゃないんよ。
早よ行って見てあげてえな」

吹き出した策ノ進に
腹立たしく思いながらお民は急かした。


「お民、それは精通と言って
子種が出始めたのだよ
おなごのお前らが月のモノが出るであろう?
それに似て与作が
大人になりかけたということじゃ」

「ほんまか?病気と違うんか?」

「病気ではない。安心しろ」


畑小屋にたどり着くと
与作は隅っこに隠れてべそをかいていた。

「与作!先生様を連れてきたで!もう安心や!」

お民がそのように告げ、
策ノ進の顔を見るなり
与作は策ノ進にしがみついてきた。

「先生さま、白い小便が出た!」

与作は必死に告げたが
策ノ進を連れてくる道すがらで
精通のことを聞いていたお民は
可笑しくて吹き出しそうになった。


「安心しろ。それは子種というものである。
大人になれば皆それを出す。
それが出たということは
お前も少し大人になってきたと言うことだ」

「そうなんか…
わし、てっきり流行病やと思ってしもたわ」

惚けた顔で与作が話すので
三人は腹を抱えて笑った。


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