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いろはにほへと
第2章 寺子屋

さて、問題は寺子屋の月謝である。

策ノ進としては金子(きんす)を稼ぎたかったが、
貧しい農民には
そんなものを払う余裕がなかった。


「策ノ進さまは学問を教える。
そのお礼に食べ物をもらったらええやん」

お吉が手をポンと叩いて妙案を出した。

日々飲まず食わずの策ノ進だったので
お吉の案で手を打つことにした。



寺子屋は盛況だった。

口減らしのため
奉公に出したくてもそろばんはおろか
読み書きさえ出来ぬ子を
なかなか引き受けてくれる店がなかったからだ。

せめて多少なりとも
読み書きが出来れば
引き受けようという店がいくつもあったので
農民たちはこぞって子供を寺子屋に行かせた。


しかし、月謝代わりの食い物が
大根ばかりなのには驚いた。

「仕方あらへんわ。
この時期は大根しか獲れへんよって…」

そうや、うち、漬け物にしたるわ。

そう言ってお吉は
家からぬか床をかすめてきて
甲斐甲斐しく漬けはじめた。


「そなたはなぜこのように
拙者の世話をしてくれるのだ?」

ぬか床を混ぜるお吉の尻を眺めながら
策ノ進は尋ねてみた。

「うち…あんたが好きやよってに…」

か細い声で告白したお吉の尻が
心なしか策ノ進を誘っているようであった。
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