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いろはにほへと
第9章 お吉を奪い返す

「天晴れ(あっぱれ)見事である!」

殿は褒め称えたが
藩士達は静まりかえったままだった。


確かに策ノ進の腕前は見事であったが、
よもや城下の浪人ごときが
武道の頂点に立ったのだから面白くはなかった。



「そなたの素性がどうあれ、
勝者には武芸道場の師範として雇い入れる」

この上ない殿からのお達しであるが、
策ノ進は丁重に断った。


「何故じゃ?晴れて藩士と反りさけるのだぞ?」


「殿様のお言葉、身に余る光栄にござる…
しかし、拙者のような身分では
誰も道場に来てはいただけまい…
ましてや師範としての求道心も
芽ばえることはござらん」


策ノ進の言葉ももっともであった。

現に藩士達には
恨みと妬みの表情が浮かんでいたのだ。


「わしとしてはそなたの腕前が欲しいのだが…
わかった。代わりの褒美をつかわそう…
何なりと申してみよ」

この言葉を策ノ進は待っていた。


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