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蜜と獄 〜甘く壊して〜
第3章 【秘密裏な罠と罰】
「お前こそ今日は驚いて不安でいっぱいだったよな……的確に判断してアイツを助けてくれてありがとうな、それと……俺を頼ってくれて嬉しかった、真っ先に呼んでくれて嬉しかったよ」
ちょっとやそっと見ただけで本当に見抜いちゃうんですね。
震える手であなたに電話しました。
声を聞いただけでスーッと不安は取り除かれていった。
あまりにもあなたが私を優しく呼ぶから。
リリカではなく、紗衣と。
引いた手をいとも簡単に握ってこられる。
言葉はなくても伝わってくるから怖い。
何に期待してるの…?
壁を作ったのは自分自身なのに。
壊そうとしないで。
「タクシー来たので帰りますね」
そう言っても離してくれない手に困ったフリをする。
この人の前ではとことん演技しなければならないようだ。
これ以上、温もりを与えられたらマズイ。
それなのにやっぱりもうその腕の中で。
ほんの一瞬だったかも知れない。
ギュッと抱き締められて忘れようとしていた香りに包まれた。
「頼むからもう無茶するな……お前が巻き込まれなくて良かった」
肩にかかる堤さんの吐息。
「ごめんなさい」と呟いた。
「アイツもアイツで大事だけどな、俺にとってはお前も大事なんだよ、お前こそ失ったら元も子もねぇ…」
タクシー運転手が気を遣いながら呼びに来てくれた。
離れなきゃ……と顔を上げる。
今にも泣きそうな顔。
ボスには似合いませんよ。
「居なくなりません、私」
「え?」
「ピンピンしてます、元気です」
おどけてみせてなるべくその空気にならないように。
笑ってください。
じゃなきゃ安心出来ないので。
「また明日…ってもう今日ですね」
「来てくれるのか?出勤日じゃないだろ?」
「来ちゃ…ダメですか?気になるし」
「いや、ありがとう」
「また行く前にメールしますね」
「あぁ、気をつけてな?」
「はーい、おやすみなさい」
うん、大丈夫。
笑顔でタクシーに乗り込む。
お金を渡され断ったが無理やり持たされた。
そして最後、見えなくなるまで見送ってくれていた。