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蜜と獄 〜甘く壊して〜
第3章 【秘密裏な罠と罰】
「ダメか?こんなオッサンがひとりの女に溺れたら…」
信じない………信じたくない。
私は溺れたくない。
引きずり込もうとしないで。
せっかくの決意が……崩れるのだけは勘弁して。
「ダサいですね……興醒めです」
「そうか……俺、格好悪いな、嫌われちゃったな」
垂れた前髪で顔がよく見えない。
ダメだ………触れそうになる手を引っ込めた。
「でもどうしようもない……死にそう、俺の中に溜めてた紗衣がもうなくて…」
頭を抱えながらベットに腰を下ろした。
「何で俺以外に触ってんだって頭おかしくなりそうだ」
ちょっと待って……何で泣いてるの?
だってこの世界に
「そうだよ、俺がこの世界にお前を引きずり込んだ……そんなの百も承知なんだ……」
「嫌ですか?私は割と気に入ってますよ、このお仕事」
「うん、俺が嫌なのは紗衣を抱けないこと」
「公私混同するなって教えてもらったはずなんですけど」
「うん、言った……」
「自ら破るんですか?」
「………特例にしてくれない?」
「は?ダッサ……」
「はい、すみません」
威厳なんてまるで無し。
いつもと180度違う真夜中の堤さん。
きっと誰も知らない姿。
断ち切るように背を向けた。
ドアノブに手を掛けた瞬間。
「紗衣」
力なく呼ばないで。
そんなの堤さんじゃない。
いつもなら俺様で勝ち気で平気で独占するくせに。
「抱かせろ」って半ば強引で。
私に拒否権なんて1ミリもなくてどこまでも搔き乱してきたじゃない。
「紗衣、来て」
なに…?呼べば来るだろって…?
馬鹿にするのも大概にしてください!と言いたくて振り返った。
でも目が合った瞬間、そんなものは見事に打ち砕かれて、散った。
来いよって瞳の奥がそう言ってる。
弱みを見せながら本当は私から来るように仕向けているの…?
お前もそろそろ限界なんだろって…?
「嫌い……堤さんなんか……嫌いです」
ダメ……泣くな。
最後まで踏み留まれ。
泣いたら台無しだ。
「うん、それでも良い」
「何もかも思い通りになるなんて思わないでください」