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女優
第12章 愛子の人生

一泊二日の撮影旅行…

今日、本番を取り終えれば
帰らなくてはならない。

帰りたくねえな…

安岡には都会の喧騒よりも
このようなのどかな田舎暮らしが
性に合うような気がした。


「監督、起きておられますか?
撮影準備は整っています」

襖の向こうからカメラマンの近藤が
声をかけてきた。

「おお、そうかい。もう少しだけ待ってくれ
身支度を整えるから…」

安岡は布団から飛び起きると洗面用具を手にした。


洗面所に向かう前に、
今一度敷き布団に鼻を近づけて
クンクンと臭いをかいだ。

どちらかというと
己の噴射した栗の花の香りが強かったが、
仄かに若女将のおまんこの匂いがした。

この栗の花の香りがなければ
若女将の残り香で一発
センズリをかくことができたのになと残念がった。



広間に行ってみると
女優の愛子が浮かない表情を浮かべ、
食べるまでもなく魚の干物を箸でつついていた。

「おや?愛子ちゃん、元気ないねえ
しっかりと食べておかないと
撮影中の体がもたないよ」

なあ、近藤。と同意を求めて
カメラマンの近藤に目をやると
これまた愛子同様に食欲がないのか
箸を弄んでいた。

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