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陽炎日記
第1章 ポンちゃん
 軽く息を止めて少女の顔を間近で観察する。
 ややポッチャリでタレ目の顔は整ってはいるが美人というよりか小動物的な可愛さがある。仔犬?仔猫?う~ん。そうだな実物は見たことがないが豆狸って感じか?名前が判らないのでポンちゃん(仮名)にしよう。
 ポンちゃんは背後に誰も居ないのに不信感を覚えて小首を傾げるが直ぐに正面に向き直した。ホームに電車到着のアナウンスが流れたからだ。
 キーキーと五月蝿いブレーキ音を上げて4両編成の電車が入ってくる。車両が停まりドアが開くと十数人が降り其の5倍以上の人間が狭い箱に飲み込まれていく。
 当然の様に俺はピッタリとポンちゃんの後ろに貼りつき遊びやすいポジションに誘導する。目指すは反対側のドアの前。ベンチシートとで作られる三角地帯。そんじょそこいらの痴漢には真似出来ないテクニックでベストポジションに押し込む。
 ポンちゃんは何故こんな奥に押し込まれたか理解も出来てないだろうがラッキー位に思っているだろう。なにしろ次に此方のドアが開くのは5つ先の桜ノ宮の最寄り駅なので人の出入りに左右される事なく身体をシートの壁やドアに預けて身体を休ませる事が出来るのだから。そんな良い場所に導いてあげたのだから感謝して欲しいものだ。
 勿論その感謝は身体で現して貰おう。
 ガタンと車体が揺れて電車がゆっくりと走り出す。徐々にスピードが上がり等間隔のレールの切れ目を通る度にガタンゴトンと音を立てる。
 ポンちゃんはドアの窓から外をボンヤリと眺めている。
 さて、そろそろいくか。
 左手で膝丈のスカートの裾を摘まんでそっと持ち上げて中に右手を忍び込ませる。スカートの中は外気より1、2℃温度が高い気がするのは錯覚だろうか?手の甲でスカートの布地を撫でながら上に進み目的地に到着すると掌で尻臀を鷲掴みにする。
 「ヒィ」
 突然の出来事にポンちゃんは短い悲鳴を上げると身体を捻って背後を確認する。俺の手は一度スカートから出てしまうが慌てる事はない。完全に気配を絶ってる俺を視認するなんて宮本武蔵にでも不可能だ。まして尻を掴まれ動転しているポンちゃんに見つかるわけがない。
 それよりも急に悲鳴を上げキョロキョロする女子中学生を奇異な者と見る周りの目に気付いてポンちゃんは恥ずかしそうに視線を下げる。
 
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