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夜の蝶の物語
第3章 年増のリリーさん

吉井さんは陰気で暗いと
リリーさんから聞いていたので

スミレたちは慌てて
スマホ画面に視線を落とし
アプリゲームに夢中で聞こえないふりをした。


「わかったわよ!行けばいいんでしょ!
稲本さん、送ってちょうだい」

稲本さんは車のキーを握り
「今夜は忙しいですねえ」と席を立った。



「吉井様というのは嫌な客なんですか?
えっとその…店長が言っていたように
本番を強要してくるとか…」

稲本はリリーさんを車に乗せると
リリーさんがタイプの女性なので
スミレを乗せていた時よりも上機嫌だった。


「本番?まあ、そう言うふうに
迫ってくる男ならいいけど
あの人、勃たないのよ
まあ、こちらは楽だけど
一言も喋らないから不気味なのよね」


スミレのようにシートを蹴りあげる事もなく
リリーさんは稲本の問いかけに丁寧に答える。


『うちの事務所には多くの女の子がいるけど
この子が一番家庭的な匂いがするなあ
まあ、三十路ということで
落ち着いているせいかもな』

お客として彼女を指名したら、
どんなプレイをしてくれるんだろう…




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