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夜の蝶の物語
第3章 年増のリリーさん
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しばらくは放心状態の二人であったが
現実に引き戻すかのように
リリーのスマホが鳴り響いた。
電話の相手は運転手の稲本からであった。
「リリーさん!何してるんですか!
もう時間が過ぎてますよ!延長ですか?
それならそうと連絡をくれないと」
稲本の怒鳴り声を制するように
「ごめんなさい、今すぐ行きます」
と言って電話を切った。
リリーさんの返答の声が妙に艶かしく、
思わず稲本は怒鳴るのをやめて聞き惚れた。
「ごめんなさい、お時間なの…」
セックスをした後の甘いムードも無しに
リリーさんは身支度を整えた。
「ええ、わかってます…
延長も出来ない甲斐性なしですいません」
そうこうするうちに稲本から再び着信があった。
「延長か?延長するならそう言ってくれ!
こっちはすぐにでも事務所に帰って
その脚で咲桜(さくら)さんを乗せて
送り届けなきゃいけないんだけどねえ!」
かなり焦っているのだろうか、
言葉が喧嘩腰だった。
電話を切って
「ごめんなさい…ほんとに私、行かなきゃ…」
と後ろ髪を引かれる思いで
吉井さんの部屋を後にした。
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