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キャンバスの華
第6章 銭湯の主人と女将

「わたしゃ、絵描きに興味があってね・・・
絵が仕上がっていくのを見学させてもらおうかな」


これには参った・・・

集中したいから一人っきりで描きたいのだが・・・

しかし雇われの身としては拒みにくい・・・


「そうだねえ、あんたは
絵に興味があったんだよねえ・・・
じゃあ、ここで見学させてもらうといいやね
お弟子さんは・・・
昨日と同じように私のお茶の相手をしておくれ」

女将は、これ幸いとばかりに
旦那の提案に膝を打って大賛成した。

このとき、旦那が値踏みするかのように
華の身体を 舐めるように
みつめていたのを誰も気付かなかった。


集中できるかしら・・・・

そう思いながらも華は
絵を描くプロなのだ

集中力を削がれようと描かなくてはならない。


構図は昨日に男湯のものを描いていたので
頭の中に出来上がっている

華は『よしっ!』と気合を入れて
ペンキの絵筆を手に取り
次郎が昨日に組んでくれていた足場を登り始めた。


『ほほう・・・・』

風呂屋の旦那は思わず感嘆した。

華の筆さばきに感心したのではない、
男には絵心などない。

いや、それどころか
絵画そのものにはまったく興味がないと
いってもよかった。

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