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キャンバスの華
第8章 別れ、そして新たな旅立ち
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「あなた・・・? あなたったら・・・」
身重の千代が心配そうに
ソファから身体を起こして次郎に声をかけていた。
『はっ!』 次郎は千代の声に我に返った
「こらこら、モデルが動いてはダメじゃないか」
「そんなことを言ったって、
あなたったらさっきから
筆が全然動いてないんですもの。
そんなペースでは個展に間に合わなくなるわ
いえ、その前に赤子(ややこ)が産まれて
このお腹がぺったんこになってしまいますわ」
大きなお腹を愛しそうに擦りながら
千代は微笑んだ。
次郎は個展に出展する最終作品の
妊娠裸婦画を描いていた。
「そうだな、早く仕上げなきゃ・・・」
そう言いながら次郎は持っている絵筆を見つめた。
絵筆には英文字でHANAと刻印されていた。
『華・・・』
次郎は再び《あの日》に思いを巡らせた。
・・・・・・・・・・・・
華はなにか心配事でもあるかのように
塞ぎこむようになった。
そして、意を決するかのように
蘭方医の清庵のもとへ診察を受けにいった。
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