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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4     律子とゆかり
 83 対峙の時(8)

 この佐々木ゆかりの絶望の想いとは…
 わたしの仕掛けたシャネルの香りのカラクリ、それはつまりは…
 銀座のホステス=常務秘書のわたし
 と、いう図式。
 
 そしてそれの意味すること…
 普通ならば、いや、常識的に考えてもそんな図式、構図はあり得ないはずなのだが、それが現実であろうということの示す意味。
 
 つまりはこの現実の構図の裏側にある深く暗い、そして大きな闇の力の存在に気付いてしまったという事実…
 そんな絶望の顕れでもあると、彼女の目を見て一瞬にして感じ取ってしまったのだ。

 いい女…
 聡明で理知的な女…
 凛とした理路整然な女…
 佐々木ゆかりという、こうした世間一般でいうところの良い、美しい女であるが故に気付いてしまったという皮肉で絶望的な想い。

 例えば彼女が、間抜けで、男、オトコに依存して生きている様な凡庸な女、オンナであったならば、このカラクリになんて気づく筈もなかったはずなのに…
 聡明であるが故の悲劇といえる。

 そしてこの彼女の絶望の揺らぎの顕れの目を見て感じ取って、わたしは自分の心の想いを強く再認識をする…
 いや、確信した。

 わたしの勝ちだ…と。

「え…と、皆さんコーヒーでよろしいかしら?」
 そしてわたしはそんな勝ち誇った想いでそう問う。

 心がワクワクと昂ぶってもいた…

 実は、本音は、今日のこの時間が、この対峙の時が…
 今朝から本当に憂鬱であったのだ。

 なぜなら先の、わたしの後見人である山崎のおじさまの、また本社専務でもある彼、山崎専務としての晴れの舞台といえた記者会見のあの日…
 わたしは秘かに、賑やかな報道陣、関係者に紛れて会場内にいた。

 そしてその会場内でこの佐々木ゆかりの姿を見かけていた、いや、違う…
 どうしても彼女の姿を見たかったのだ。

 わたしの愛する男である彼、大原浩一が、大切にしている女…
 そして山崎のおじさままでもが絶賛するオンナ…
 その佐々木ゆかりという存在が気になってしまって仕方がなかったから、わざわざ見に行ったのである。

 そして遠巻きながらもわたしは…

 彼女、佐々木ゆかりの美しさに…

 嫉妬心を感じてしまう…

 いや、一瞬、見惚れてしまったのだ。




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