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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4 律子とゆかり

90 対峙の時(15)
「どうぞ…」
まずは彼、大原浩一常務に先にコーヒーを出す。
本来ならばお客様に先にコーヒーを出すべきなのだろうが、この彼女達はお客様というよりは彼の直接の部下である…
だからわたしの判断で、先に彼にコーヒーを出した。
そう、いつもの愛用品であり、彼の地元の銘品である『益子焼』という陶器のマグカップで…
「あ、う、うん…」
そしてコーヒーを出しながら、チラと彼の顔、表情、目を一瞥する…
と、やはり彼は、その声音の通り、やや、いや、少しの動揺の色を露わにしていた。
ふうん、そう…
わたしにはその一瞬の一瞥により、なんとなく察しはつく。
そして疑惑は払拭できなかった…
どうやら何かしらの関係はあったのかもしれない、ただ、それは今ではなく、おそらくは昔か少し前であろうと。
ただ、この狼狽えは佐々木ゆかりとの同席によるモノなのだろう…と。
だけどわたしは相手の過去、それも自分と関わる以前の過去には全くの拘りはないし、気にするつもりもない。
それよりも…
この蒼井美冴さんの存在感だ。
そしてわたしはコーヒーを提供しながら、一瞥の瞬間に気持ちを集中させる…
『えっ』
するとわたしはその一瞥の瞬間に一気に心を揺るがせ、動揺してしまう。
『えっ、あ、な、なに?』
その動揺とは…
この彼女の美しさによるものであった。
なぜなら…
以前に履歴を確認した時の顔写真と、この実物があまりにもかけ離れているから。
履歴の写真は、いくらパソコンの画面上だとはいえ、いや、まるで別人みたいに生気が無く、目力の無い、ボヤっと全体的に曇った様な暗い表情の写りという記憶があったのだが…
この目の前にいる蒼井美冴さんは理知的で凛として、そしてキラキラと輝きを放つ目で一瞬わたしを見て、いや、その一瞥の瞬間にまるで観察するかの様な目をしてきたのだ。
そしてすごく若々しい…
確か履歴では37歳だった筈なのだが、どう見ても30代前半にしか見えない。
それにもうひとつ…
フワっと一瞬、わたしの鼻腔の奥を刺激してきた微かな香りが…
それはつまりムスク系の甘い香り。
その微かな甘いムスクの香りが、わたしの記憶を揺るがせ、呼び起こしてきたのだ…
わたしの中でのムスクの甘い香りの記憶…
それは…
「どうぞ…」
まずは彼、大原浩一常務に先にコーヒーを出す。
本来ならばお客様に先にコーヒーを出すべきなのだろうが、この彼女達はお客様というよりは彼の直接の部下である…
だからわたしの判断で、先に彼にコーヒーを出した。
そう、いつもの愛用品であり、彼の地元の銘品である『益子焼』という陶器のマグカップで…
「あ、う、うん…」
そしてコーヒーを出しながら、チラと彼の顔、表情、目を一瞥する…
と、やはり彼は、その声音の通り、やや、いや、少しの動揺の色を露わにしていた。
ふうん、そう…
わたしにはその一瞬の一瞥により、なんとなく察しはつく。
そして疑惑は払拭できなかった…
どうやら何かしらの関係はあったのかもしれない、ただ、それは今ではなく、おそらくは昔か少し前であろうと。
ただ、この狼狽えは佐々木ゆかりとの同席によるモノなのだろう…と。
だけどわたしは相手の過去、それも自分と関わる以前の過去には全くの拘りはないし、気にするつもりもない。
それよりも…
この蒼井美冴さんの存在感だ。
そしてわたしはコーヒーを提供しながら、一瞥の瞬間に気持ちを集中させる…
『えっ』
するとわたしはその一瞥の瞬間に一気に心を揺るがせ、動揺してしまう。
『えっ、あ、な、なに?』
その動揺とは…
この彼女の美しさによるものであった。
なぜなら…
以前に履歴を確認した時の顔写真と、この実物があまりにもかけ離れているから。
履歴の写真は、いくらパソコンの画面上だとはいえ、いや、まるで別人みたいに生気が無く、目力の無い、ボヤっと全体的に曇った様な暗い表情の写りという記憶があったのだが…
この目の前にいる蒼井美冴さんは理知的で凛として、そしてキラキラと輝きを放つ目で一瞬わたしを見て、いや、その一瞥の瞬間にまるで観察するかの様な目をしてきたのだ。
そしてすごく若々しい…
確か履歴では37歳だった筈なのだが、どう見ても30代前半にしか見えない。
それにもうひとつ…
フワっと一瞬、わたしの鼻腔の奥を刺激してきた微かな香りが…
それはつまりムスク系の甘い香り。
その微かな甘いムスクの香りが、わたしの記憶を揺るがせ、呼び起こしてきたのだ…
わたしの中でのムスクの甘い香りの記憶…
それは…

