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胡蝶の夢
第9章  華 






「お前っ…」



それは転んで出来るような痣では決してなく、故意に誰かにやられたとしか思えないようなものだった。


紫色に変色した無数の内出血の痕と肌の上を這う様にして伸びる蚯蚓腫れの痕。



「誰にやられた?」



「いえ……」



寛継は目を合わせようとしない。


タイを取り胸を開くと、そこにも傷跡があった。


それは背中までも刻まれている。


俺に気が付かれないよう、洋服に隠れる部分のみを痛めつけたのだ。



「誰がやった!?」



言葉は怒気を含んだ。


誰がこんな事をした?


ふざけるな…。


育ちがどうであれ、子供であれ、仮にも主人だ。


そんな俺を怒らせたのだ。


犯人が分かったら即刻クビにしてやる。


絶対に復讐してやる。



「主人の俺に隠し事か?」



寛継の襟を掴んで迫った。



「誰にやられた?」



行き場も無く、戸惑う様に彷徨っていた目線が俺に向けられた。



「……大旦那様です」



寛継のその絞り出すような声に、俺の中の力はすぅと抜けた様だった。








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