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胡蝶の夢
第10章  心無いモノなら





「へぇ…」



相手は黒崎だ。


やすやすと信用は出来ないが、少なくともここから一生出られないのよりは希望がある。



「そこで僕は何をしていればいいの?」



「…瑞貴様はピアノが達者でいらっしゃいますから、是非この機会に一曲お願いしたいと仰せでした」



「ピアノ?」



黒崎が演奏に聞き入っているところなど想像も出来ない。


むしろ、アイツは僕の演奏を嫌っていたはずだ。


耳障りだと言ったはずだ。


しばらく考えて、僕は結論を出した。



「ピアノくらい、いくらでも弾いてやるさ…」



もしこれに何かあったとして、企みがあるのはこちらも同じこと。


どちらがどちらを制するか、化かし合いといこうじゃないか。


今の僕には憎悪しかない。


これを糧としなければ進めない気がする。



「では後程、お迎えにあがります」



静かな目で寛継はそう告げてドアの向こう側に消えて行った。







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