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胡蝶の夢
第10章  心無いモノなら





片方の手で腕を捻り上げたまま、寛継はもう片方の手で僕の上着を探った。


動いて暴れようとしてもビクともしない。


本当に自分の非力には辟易とする。



「これは私が御預かりします」



バレないよう内ポケットに隠しておいたテグスを奪い取られた。


それと、滅菌パウチされた用途不明の医療用具。


とりあえず凶器になりそうな尖ったものを見繕って忍ばせておいた。



「先程、箱を覘いた際にいくつか無くなっていたようでしたので、もしやと思いましたが…。直弥様に危害の及ぶような事だけは困ります」



「くそっ、放せっ…」



まさか気付かれるとは思わなかった。


もしもの時、反撃にうってでるには力のかなわない相手に武器しかないと思ったのだ。


身体を傷付ける事はしなくても、脅してみせる事で相手が怯むなり何なりすればいい。



「今夜のパーティーには来賓も沢山いらっしゃいます。御振る舞いにはお気をつけ下さい。この先の粗相は黒崎家と、そして瑞貴様のお家の損失に直結する事をお忘れなきよう」





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