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胡蝶の夢
第5章  有罪




私は、何も見ない聞こえないと自分に暗示をかけながら耳を強く押さえ、蹲っていました。


あの、クローゼットの中と同じです。


私は何も知らない見ていない、無知の部外者でいようと必死でした。


あの時も今も、何も現実を認めようとせず、逃げていたのです。


ただ昨日と違うのは、貴方が私に手を差し伸べた事でした。


何か気配を感じたのでしょう。


ただ一度、腕の間からおそるおそる顔を上げて見ると、貴方の眼差しはなんとこちらに向けられているではないですか。


そして、その手折られてしまいそうな細い腕は儚げにこちらへと伸ばされています。


この私に。


この私に向けて。


やくたたずの、グズでノロマなこの私に。


臆病者で自分の保身のために貴方を裏切る様な卑怯者の私に。


何故ですか?


どうして貴方は私を必要としてくれるの?


私自身でさえも自分の存在価値を疑問に思うのに。


どうして貴方は……。





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