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胡蝶の夢
第5章  有罪




連行される罪人の様な気持ちで足を運びました。


項垂れて、視界には自分の足のつま先しか映さぬまま、長い廊下を歩きます。


やがて開けた場所に出ました。


どこもかしこも一面真っ白な部屋です。


この時の私は扉をくぐった事にも気付かない程に曖昧な意識をしていました。


ここは?


ついさっき自分が黒い箱を差し入れたのがこの部屋と分かるまでに、随分と時間を要した気がします。



「想世…」




兄が私を呼んでいます。


ぼんやりと、声のした方に顔を向けました。



「しっかりと見ておきなさい。お前はすでに共犯なんだ」



ドサリと重たいものが落とされる音がしました。


黒と白の塊が床の上に転がっています。


やがて、キリキリと軋む様な音と共に、ただの白と黒の塊にしか見え無かったものが、次第に人間の形を成していきました。


あれは…。


霧がかった脳内が一瞬にして晴れるように、私はその場景を見てハッとしました。



「共犯だ…」



兄の声が低く冷たく響きました。





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