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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人

「お父さん、本当に帰って。三が日過ぎたら、ちゃんと家戻るって言っただろ?電話もしたし、年賀状も送っただろ?悪いけど帰って」

「彩月も、水臭いぞ!お父さんはお前の顔が見たくて……ちゃんと寝てるか?飯食ってるか?お父さんは、お前を正月まで働くような娘に育てた覚えはない!」

「まずは小松原さんから無心したお年玉、返して」

「私は良いのよ、彩月。お金なんて、いつか死ぬまでには使いきらないと──」

「小松原さんは少しお財布の紐を締めて下さい」

「佳子さん、せめてヒント!ペットは犬ですか?猫ですか?今流行りのウサギですかー?」


 彩月に押し出されながら、今にも客室を追われようとしている男は、女でないことを差し引いても、来客としては珍しいタイプだ。量販店によく見かけるシャカシャカした素材のアウターに、トレーナーにスラックス。気取らないのは男の身なりにとどまらず、なかなか整った顔かたちにも関わらず、生活臭も溢れ出ている。


「あさひちゃん、隠れて」

「え?」


「おおー?!新入りちゃん?娘と言い、佳子さんの家政婦さんは美人な子が多いねぇ!オジさん、爆発しちゃうかと思ったよ。いやぁ、振袖似合うね、彩月なんか頼んでも着てくれなくてねぇ。君、将来はお姫様だよ。僕の娘には負けるけど!ははは」


 美影があさひを庇うようにして前に出た時、僅かな隙に、男の──…いや、瀬尾隆と名乗る彩月の父親が、あさひに気づいた。
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