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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人


「あさひって、あたしのこと好きだろ」

「っ…………」

「じゃなかったら、こんな可愛い顔、見せられないよ」


 儚げな笑顔。少年めいた悪戯な表情。

 あさひをからかう彩月こそ、どうすればこうも誘惑的な顔を出せるのか。


 恋人に対するようにあさひの頬を片手に包んで、寝巻きのボタンをくすぐりながら、もっと見せてよ、と彼女が囁く。

 自分の身体など見飽きているのではないか。ペット販売店の従業員よろしく、排泄物の世話までしているではないか。

 そうした思考が霧散したのは、あさひの羞恥が優ったからだ。彼女にとっては物同然のはずの自分が、その目に今だけは叙情的に映りたいという欲求が、あさひにこまやかな感情をもたらす。

 
 彩月は器用にあさひのボタンを外していった。

 女の脱衣に慣れた手つきに、不安がよぎる。はだかれていく期待感、露出していく肌が空気に触れる感覚にぞくぞくしながら、やはりあさひは心のどこかで冷めている。
 華やかで裕福で、きっと対等に交われる佳子の客達に比べれば、彼女にとって、あさひがどんな存在かは明らかだ。


「分かってたけど、何度見てもおかしくなりそう。綺麗だよ。あのおばあさんはろくでなしでも、あさひをこんなにしたことだけは、褒めてやっても良いかなって……思う」

「彩月、さん……──ァッ」


 乳房に触れかけた彼女の指が、微かに浮き出たあばらに落ちた。肉叢を味わうようにして、細い指が脇腹を滑り、あさひの腰のくびれを撫でる。
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