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秘匿の闇市〜Midnight〜
第1章 愛玩少女の製造法

 公園の中心には、祭りやイベントなどで見られるのに似た、簡易ステージが設けてあった。半円状にパイプ椅子が並べてあって、近くにはテントや本部の受付がある。数人が、何か手続きのようなことをしている。


「おばあちゃんも行ってくるから、お前はそこのテントで着替えてきなさい。下着も、入っているものにつけ替えるのよ」


 あさひは育江からビニール袋を受け取った。彼女のトートバッグから出てきたそれは、着替え一式が入っているにしては薄い。

 しかし、育ての親には逆らえない。

 あらゆる疑問を胸に仕舞って、あさひはテントへ足を向けた。


 テントは更衣室になっているらしく、ちょうど中から女が出てきた。

 随分、沈痛な顔をした女だ。

 そう思ってあさひが中に入ると、そこには、いよいよこのフリーマーケットの異様性が浮き彫りになるほどの光景が広がっていた。

 酒臭い大人達。実際、売り手も買い手も缶ビールを飲み交わしながら商談していたマーケットスペース──。テント内は、いかがわしい下着やコスチュームを着用した女が多くを占めていた。稀にメイドの格好をした女も見るが、ブルーシート上でハウスキーパーとして労働力を出品していた売り手達に比べると、性的に媚びた感じがある。


「きゃっ」


 その時、あさひは足元にいた女に気付かず躓いた。


「ごっ……ごめっ、なさい……」

「いいえ、ごめんなさい。私の方こそ……」


 屈み込んで女に詫びて、どきりとした。病人のように白い女は、目に涙を浮かべて震えていたのだ。あさひが足を引っかけたことが原因ではないのは、明白だ。
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