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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法


 志乃には打ち明けられない事情があっただけだ。

 彩月が慕っていたのは佳子だ。その佳子のペットが壊れないよう、ともすれば自殺の危険性まで考えて、あれだけあさひに優しかったのかも知れない。


「彩月さんには、感謝してるよ。色々あって、私は普通じゃなくなってた。あの頃、生きていられたのは、彩月さんのお陰。格好良くて、歳なんてそんなに変わらないのに包容力あって、モテるの分かるよ」

「あさひちゃん。……」


 志乃は僅かにたゆたったあと、何かを決心した顔で、あさひも知らなかったことを話し始めた。

 美影と連絡をとるようになってすぐ、一定の時間ごとにトーク履歴を消さなければいけないと言って、彼女が志乃に予め詫びてきたこと。昨年に交換した彩月のLINEはここ数ヶ月、既読が付かない。電話をかけても圏外になる。ただ先月、美影が一度、彼女に電話を代わらせた。その時は、特に変わった様子はなかったというのが、志乃の話だ。


「受験終わったら、会いに行ってみたらどうかな」

「私が?」

「ごめんね、あさひちゃんにこんな押しつけみたいなこと。でも、彩月ちゃんの見た目にだけ惹かれてるなら、あの子のことは忘れてあげて。たった一人の大事な姪が悲しむ顔は、見たくないから」
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