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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法

 佳子が欲しがっていたのは、彩月だ。彼女があさひを逃したのは、佳子にとって好機だった。
 ただし売り物として養育されたあさひと違って、思春期の頃、彩月は陽音に手を上げられていた。例外を除いて、脱衣が求められる遊びを好む女を相手に出来ないし、佳子自身の安全面から、男の客はまず彼女に取らせない。そうした意味でもあさひを飼うより人道的だったというのが、佳子の話だ。


「ごめんなさい、彩月さん。私、呑気に……何もなくて良かった、なんて……それに、お母さんがそこまでの人だったなんて……」

「謝るなら、バカ正直に小松原さんを呼んだ自分に謝れ」

「…………」

「それに、あさひはあの人に全然似てない」


 さっき彩月に触れたあさひの手に、彼女の片手がじゃれついた。

 その目の優しさに、まだ、彼女の心があさひにあると、期待する。



「彩月」


 佳子が彩月に呼びかけた。彼女に顔を上げるその眼差しも、あさひに対するのと変わらない。

 彩月のもう一方の手に、佳子が針に似た形状の金属を握らせた。あさひは、それをどこかで見たことがある。


「情けよ。今後、私だってあさひに恨まれていたくないから」

「…………」

「首輪だと、貴女のような人がまた切ってしまうでしょう。貴女があさひに印を付けたら、この子のショックも小さいわ」


 それは、ボディピアスのニードルだ。
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