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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法

 お茶の二杯目を所望でもする言葉つきに誘い込まれるようにして、彼女の靴下に指をかけて、引きずり下ろす。
 女を買うくらいなら美容液を選ぶ佳子は、足先まで剥いたばかりの卵肌だ。その指を軽く吸い上げて、彼女に負担をかけない程度の角度に踵を持ち上げて、裏側の窪みに口づける。キスしたばかりの場所に舌を這わす。


「んっ……」



ちゅる……ぢゅる。



「はぁっ、ァッ……」



 舐めろと命じられればキスまでするのは、変わらず愛おしいからだ。主人に懐く愛玩動物を倣ったように、周囲の目がないのを良いことに、彩月は佳子の指と指の間に舌を滑らせて丹念にしゃぶる。ふくらはぎを愛撫しながら、足裏に再び唇を寄せる。

 この場所への口づけは、屈従の意味があるという。

 実際、彩月は佳子にその通りの感情を向けている。
 命に差し障る要求を除けば無条件に応じるし、長らく娘離れの出来なかった彩月の父親は、佳子が定期的に小遣いを振り込むようになった途端、帰って来いとも言わなくなった。早い話が、あさひの祖母とどう違うのか分からなくなった実の親より、彼女の執着の方が信頼出来る。

 いつか美影が、彼女がかつての配偶者と同じ終わり方をすれば、彩月に自由が戻ると言った。別段、美影も佳子の病を望んでいるわけでないだろう。ただ、彩月を見兼ねているだけ。或いは彩月の自傷行為に付き合うことに、辟易しているのかも知れない。
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