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秘匿の闇市〜Midnight〜
第1章 愛玩少女の製造法


 少なくとも二世代に亘って遺伝した美貌をあさひにも継がせたかった祖母の意志により、幼稚園に通う頃には、食事や運動量は彼女の管理下に置かれるところとなっていた。弁当は他の園児達に比べて明らかに少量だったし、帰宅してからは育江の指南の下、二時間はトレーニングや体操に励んだ。
 それは小中学校に上がっても同じで、あさひは放課後に友人と遊んだり塾に通ったりしたことがない。十歳に至る頃までは毎日、腹を空かせていたし、やはり同世代の女子らに比べて小柄だったが、周囲の大人達が育江に何も言わなかったのは、あさひの発育が良かったからだ。

 ところで、十五歳で初潮を迎えたあさひが育江に施されていた精神的な教育は、初め、極めて品行方正だった。
 門限が厳しかったのは言うまでもない。加えて、恋愛というものがいかに子供にとって害悪かを聞かされていたあさひには、いわゆる愛の告白を受ける度に育江に報告すること、並びに相手を拒否することが義務付けられていた。


「お前のお母さんはお前を産んだ時、十九歳だった。未成年で愛だの恋だの浮かれているから、添い遂げられもしない男との子を産んで、逃げる羽目になったのよ。女に教養はいらないし、友達もいらない。お前も来年は高校生なんだから、悪い影響を受けるような真似はしないで、将来のために大事なことの練習も始めなければね」
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