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自分であるために~涙の雨と晴天の虹~
第3章 黒い想い出と愛情
 
「……あ、ここあ!」

 何度も聞こえた声に目を冷ますと頬が濡れていた。頬だけじゃない……下半身も冷たい感覚がする。

 呼び掛けていたのは、パジャマからロンTとジーンズに着替えた美紅さんだった。私は、おそるおそる下半身に手を伸ばし、布団をめくる。

 ……やっぱりだ。嫌な夢を見た。暫く見ることのなかった過去の夢。児童養護施設で、養父母の家で克服したはずの夢。気づいて呼び掛けてくれたのだから、そんなことはないはずなのだが、嫌われたらどうしようという……そんな思考になる。

「……ごめんなさい。小さな声を絞り出した」

 美紅さんは、私の頭を撫でてくれた。

「大丈夫? 凄く魘されてたけど」

「……布団、弁償します……。本当にごめんなさい」

 私は美紅さんの問いかけには答えられず。けれど、そうは言ったものの、この豪邸の天窓ベッドの布……絶対に高級だと思う。どうしよう……。

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