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第8章 第三話【波の音】　予感　

　だが、幸太郎は浩三の子ではない。幸の前夫瀬田亮平(せたりょうへい)の子だ。幸は元は男爵令嬢であったが、帰省中の実家から女学校の寄宿舎に戻る途中、乗っていた船が難破、遭難した。奇跡的に浜辺に流れ着き、一命を取り留めたのだが、記憶喪失になってしまった。そんな幸を助けたのが近くに住んでいた漁師の亮平だった。やがて記憶を取り戻した幸は男爵令嬢という身分も何もかも棄て亮平と生きてゆくことを選ぶ。が、亮平に無理に身体を開かされたことで、亮平の許を飛び出してしまった。