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第8章 第三話【波の音】　予感　

　御者は男に礼を言い、駆けていったようだ。
　この近くの広場には噴水がある。界隈の人々のちょっとした憩いの場にもなっている。御者は大方、そこへ行ったに相違なかった。
「申し訳ございません。突然のことで難儀しておりましたところ、助けて頂きまして、ありがとうございました」
　とにかくひと言礼を言おうと幸が再び窓から顔を覗かせたその時。
　突如として、馬車が動き出した。