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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦 
 やがて弾かれたように顔を上げた。
「お母さま、僕と一緒に帰りましょう」
 幼い瞳が真っすぐに向けられている。
「―」
 幸は黙って首を振った。幸太郎の眼に大粒の涙が盛り上がった。幸は微笑んだ。
「その中、また逢えるわ」
 だが、幸太郎は涙の溜まった眼で首を激しく振った。
「嘘だ。お母さまは帰ってなんかこない」
 そう言うと、激しくしゃくり上げて泣いた。
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