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欲しいのは愛だけ
第5章 まさかの妊娠?
翌日、目が覚めてスマホを見たけど、
着信もショートメールもなかった。

手が震えてしまう。

きっと忙しいのね?
それに、男の人だし、
毎日連絡とかをする習慣、ないのよね?


そう思いながら、
「航平さん、おはようございます」とショートメールを打ってから朝のルーティンをこなして、会社に向かった。

前夜、夕食も取らず、
ご飯も炊いていなかったので、
お弁当はサンドイッチになってしまった。


その日は仕事も平坦な感じで早めに終えて帰宅することにした。

帰りがけに、航平さんが連れてきてくれたバーの近くを通りかかったので、立ち寄ってみた。

重たい木のドアを開けると、
まだ早い時間のせいかお客様は誰も居なくて、
ママさんが「おかえりなさい」と笑い掛けてくれる。

「あら?
待ち合わせ?」

「いいえ、違います」

「そうよね?
森田さん、いつも仕事で来るのは11時過ぎだし、
忙しいみたいで今週は一度も来てないし…」と言いながらおしぼりを渡された。

「何になさいます?」

「この前と同じものをソーダ割って出来ますか?
なんていうウィスキーでしたっけ?」

「マッカランよ。
いつも、それ」と言って、
ナッツと一緒に出してくれた。

喉が渇いていたので、
私にしては早いペースで飲むと、
「また来ますね?」と言って立ち上がった。

「メイちゃん、今度は2人で来てね?」とママさんが声を掛けてくれたけど、
次々に常連さんが入ってきて、忙しそうだったのでそっと頭を下げてお店を後にした。


そして閉店間際の百貨店でマッカランとバカラのロックグラスを2つ買って帰宅した。



もう金曜日…。
散々悩んで、
思い切って電話鳴らしてみたけど、
電波が届かないか電源が入っていないという機械の音声だった。


あんなに優しく、そして激しく愛してくれたこと、
夢だったのかなと思うほど、
距離を感じてしまって、
気づいたら泣いていた。


「航平さん、おやすみなさい」と、
前夜と同じショートメールを送って横になったけど、
寝付かれないまま朝になってしまった。


そして、土日も連絡もなく、会えないまま終わってしまった。


副社長は水曜日に、
社長は金曜日に帰国予定だった。


そして、火曜日の夜、藤堂先生といつか連れて行っていただいた四谷のフレンチで会うことになっていた。

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