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欲しいのは愛だけ
第8章 逆襲〜或いは隠れていた本音
目が覚めると病院の個室に居た。
心配そうに航平さんが覗き込んでいる。

「メイ、大丈夫か?」と、涙ぐんで手を握り締める。


「赤ちゃんは?
赤ちゃんは大丈夫だったの?」と訊くと、
「うん。大丈夫だったよ。
でも、メイの額に傷が出来ちゃって、
跡が残るかもしれないって?」

「額なら髪の毛で隠れるもの」

「バッグも傷だらけだよ」

「使い込んだ感じの方がかっこいいじゃない?」

「俺が守れなくてごめん」

「敵に背中を向けるなんて、
油断しちゃいけないってことね?
ゴルゴも言ってる。背中は見せちゃダメなのよ」と言うと、
航平さんは泣きながら笑った。


「優子先輩は?」

「傷害罪で現行犯逮捕されたよ」

「お子様の前で?
可哀想じゃない」

「いや、殺人未遂の可能性もある位だったから、
まだ、軽い方だよ」

「どうしてあんなことを…?」

「メイが幸せそうに見えて、発作的にって言ってるらしいよ」

「そんな…。
優子先輩だって好きだった人と一緒になれたんでしょ?」

「上手くいってないらしい。
子供は新しい父親に懐かない。
自分の親からも非難されて絶縁状態。
やつの仕事も…安月給のサラリーマンで、
こんなはずじゃなかったって」

「でも…あの女の子の本当のお父さんなんでしょ?
愛情があってお付き合いされてたんでしょ?」

「どうだろう?
遊びだったのか、本気だったのか…。
今はは生活も荒れて、
思ったのと違ってたんじゃないかな?
生活費だって、雲泥の差で、
贅沢も出来ない。
そこにきて、幸せそうな俺達を見て、
嫉妬したんだと思う」

「嫉妬って…
航平さんを取り戻したいってこと?」

「違うよ。
俺と一緒の頃の経済力を取り戻したいってことだろう。
それと、幸せな顔してるメイにヤキモチ妬いたんだろう」

「赤ちゃん…無事で良かった」

「うんうん」

「あのね、お腹に居る時、火事とか災害とか、ストレスを受けると、
凄い痣になったりする場合があるって聞いたことあるの。
私、赤ちゃんが全身痣だらけでも、
めちゃめちゃ可愛がって育てるわ。
私の気持ちが写ったみたいなものだもの…」と泣き出してしまう。

「メイ、泣かないで?
俺だって同じだよ。
守れなかった俺の気持ちが写ったみたいなものだから。
無事に生まれてくれるだけで感謝しようね?」と言って抱き締めてくれる。
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