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欲しいのは愛だけ
第8章 逆襲〜或いは隠れていた本音
その後も有難いことに赤ちゃんについては順調だった。
航平さんも今まで以上に私を気遣ってくれて、
ちょっと過保護な程だった。


優子先輩のことは敢えて話題にはしなかった。
事情聴取のようなことも、
必要な診断書や提出書類なども、
「妊婦だし、精神的なストレスを受けたから」と言ってくれて、
全て航平さんがあれこれしてくれた。


「お母さんとお父さんが、
穏やかに明るい気持ちで過ごしたら、
元気な赤ちゃんが生まれるものよ?」

祖母がそう言っていたので、
そのように過ごすことに気を配っていた。


外出については、航平さんの方がナーバスというか、
万が一また、誰かが私に危害を加えたらと思っているらしくて、
基本的に1人での外出は許してくれなかった。

でも幸いにも航平さんのお母様や私の母が足繁く来てくれたりしたので、確かに安全で安心な生活を送れた。


航平さんのお母様は専業主婦とは言っても茶道と華道をご自宅の離れで教えていたらしたので、
祖母にも相談した上で、私もお稽古を再開していた。

「鎌倉まで通うのは大変ですし…。
たいして仕込んでないからお恥ずかしいですけど、
宜しくお願いします」と祖母が鎌倉から遊びに来た時に言ってくれたのがきっかけだった。

お免状は既に最高位まで取得していたけど、
学ぶことはたくさんあるので本当に楽しいと思えた。

主婦業をきちんとしながらも、
師匠としてたくさんのお弟子さんを指導して、
自分自身も研鑽を続ける祖母やお義母様も女性として尊敬していた。

勿論、ピアノ講師を趣味程度にやっている母も、
女性としてはいつまでも愛らしくて素敵だと思った。


外でバリバリ仕事をするのも素晴らしいことではある。
藤堂先生はそんなタイプかもしれない。


でも、もしかしたらそれと引き換えに、
愛情については望む通りにはならなかった。

…あんな社長のことも、愛していたんですもの。



2つのものを手にするのは、
余程運が良い人なのかもしれない。

だったら、私は、
1つだけあれば良い。


航平さんの愛情。


そう思ったりしていた。




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