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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第16章  誕生祭 ~舞踏会の華たち~ (後編)

 
 国中の王族や貴族たちが集まり陛下の誕生を祝うと共に、陛下の婚約を祝い、妃となるサクナをお披露目する近年にないほどの大規模な公式行事。

 ここにいる殆どの者がサクナを知っている。
 彼女自身の事ではなく祈り姫としてだ。



 今、必要なのはリキマシアの未来を不安に思うことでも、この空気に呑まれ緊張することではない。

 
 いかなる状況に置いても冷静で居られるか。

 陛下に相応しい妃であることを示す度量と寛容性、サクナの最も苦手とする慈悲に溢れた包容力を見せることだ。

 陛下を支え、国を想い、未来へと繋げる架け橋となる器であること。
 


 この日のためにサクナはダンスの練習をつんできた。もともと身のこなしが軽いサクナは、ダンスの上達も早くレオナールも褒めてくれるほど。

 そして、サクナ自身密かに舞踏会でルカと踊るのを楽しみにしていた。練習を重ねるうちにいつしかサクナはダンスが好きになっていた。


 もちろん緊張もする不安もある。
 加え、リキマシア国の未来がどうなってしまうのか不安は尽きない。

 更には自身のお腹には子が宿っているかもしれぬ。否、サクナは既にそうであると確信している。


 この上ないほどの人生において憂慮な時である。


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