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オオカミオトコの花嫁
第1章 はじまり
 ダンっ、と思わずテーブルを叩いてしまう。学校内のカフェにいたため、ざわついていた店内は一瞬しん……とするが、すぐにもとの喧騒に戻った。

「荒れてますね、ロゼッタ」
「……ごめん、マリン。ルーがね、この前やっと発情期になったんだけど、わたしに指一本触れてこなかったの。狼男や蛇女は基本的に性欲が強くて、魔法使いのパートナーと性交するのは当然の流れなのに。わたし、たしかに他のご令嬢に比べたらおしとやかではないし、マリンみたいに胸も大きくないから色気なんてないかもしれないけど……さすがに発情期ですら頼ってもらえなかったのが悲しくて」
「そうだったんですね……」

 心配そうに見つめられ、ロゼッタは苦笑するしかない。
 狼男や蛇女は、パートナーと性交することで魔法使いの魔力を得て、さらに強くなっていく種族だ。彼らと相棒関係を結ぶということは、性交も込みと考えるのが一般的で、さらに、魔力も性交を重ねることで強くなっていくため、魔法使いにとって性交はごくごく当たり前のことなのだ。
 どちらにも利益があるはずの、相棒との性交。
 なのになぜ、ルーヴは手を出してくれないのだろう。
 一生懸命、誘うような格好と言動をしたつもりだったのに、発情期の夜も、彼はロゼッタを部屋に招かなかった。

「いっそ乗り込めばよかったのかしら」
「それは……どうでしょう。でも、ルーヴさんは騎士コースを選択するくらい真面目ですから……」
「マリンのパートナーも騎士コースじゃない。グレンさんは、発情期どうしてるの?」
「………ええと………」
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