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濡れて堕ちて……
第10章 代償
ここに来てもうすぐ10日ぐらい経つ。

私の生活は相変わらずだ。


徹は1週間の有給を終え仕事に復帰した。


「俺がいない時間が増えますから」と、監禁部屋からは解放してくれた。

徹が仕事してる間中、あんな監禁部屋に閉じこめられてたらおかしくなってしまう。


徹の部屋、この部屋の中なら自由に使っていいからと体中を拘束してた鎖も解いてくれた。

ずっと監禁部屋に閉じこめられてて知らなかったけど、前のマンションに比べたらやはり大分広い。

これで一人暮らしなんて贅沢な話だ。

オープンキッチンにオール電化、いい暮らしをしてるのが伺える。

テレビも自由に見ていいし、お風呂に入っていいし、お腹が空いたら冷蔵庫のものを勝手に食べてもいい、と言う事だ。


この状況なら助けを呼ぼうと思えば呼べるし、いつでも逃げられるけど


もし、逃げたらあの映像をバラまかれるかも知れない。


そう考えると逃げ出せないでいる。


パソコン内からあの映像のデータを消去すればいいだけの話だが、徹の仕事部屋は厳重に施錠されているし

例え部屋に入れてもパソコンの使い方すらわからないし

バックアップもしてるはずだ。


あの映像がある限り警察にも駆け込めないし…。



浩一、早く浩一の元に帰りたい。

今すぐ会いたい。






「ただいまぁ!うっわ、美味そうな匂い!」

19:55、徹が帰宅した。

1日中、テレビを見てても仕方ないし、冷蔵庫の中のものを使って料理をした。

徹の為に作った訳じゃなく、単に暇潰しがしたかっただけだ。

「最近ずっとコンビニ弁当だったんで助かります」

投げつけるように鞄をソファに置き食卓に着いた。

用意した料理は1人分、こんな奴の前じゃ食欲なんて湧かない。

「陽子さん食べないんですか?」

「…食欲ないから」

「何か夫婦みたいですね」


…冗談じゃない、こんな奴と夫婦なんて。


献立は…、焼き飯と酢豚と唐揚げ。

冷凍庫に賞味期限間近の肉が数種類ほど入っていたのでちょうどよかったけど。
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