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濡れて堕ちて……
第11章 泡沫
息を切らしながらエレベーターのボタンを押した。


1階にあった箱がゆっくりゆっくり上がってくる。


何でこんな時に1階で止まってるの?

早く、早くっ!!



急ぐあまりボタンをバンバン叩きながら、徹が来ないようにと後ろを何度も確認した。


早く、早く、早く……っ!!



10、11、12階……早く!!




キィー…ッと後ろからドアを開ける音が聞こえた。




びくっとしながら後ろを振り返ると



千鳥足で頭を抱える徹の姿。




「ひっ…」




ここまで来たのに……。

ここまでなの…?



まだ脳震盪のせいでクラクラするのか壁に寄りかかりながらこちらに近づいてくる。



「陽子さ……」




もう、ダメ…!




と、思った瞬間






チンッ

その音と共に私は後ろへ倒れそうになった。

間一髪のところでエレベーターが到着。



急いでエレベーターに乗り込み1階のボタンを押して



視界をやられたのか見えてないのか、徹は虚ろな目で慌てて追って来る様子もない。




よかった…。

私、助かったんだ…。




「はぁ、はぁ……」



私は自由になったんだ。

緊張が解けエレベーターの中で腰が砕けてしまった。




やっと、やっと徹から解放されたのだ。



浩一……

確かに私はあなたを裏切ったかも知れないけど

今はただ、浩一に会いたい。



会って、ちゃんと話がしたい。

徹に浩一の人生の邪魔だけはさせない。
















「それで俺から逃げたつもりですか?陽子さん…」

















浩一、今帰るからね。
















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