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濡れて堕ちて……
第12章 審判
浩一の背中が急に小さく感じた。

ストレスのせいかはわからないけど少し痩せたのかも。

無精髭も生えっぱなしだ。





「いつからだ?」

「え?」

「あの…新村徹とかいう男といつから…」




稲妻が空を走り、薄暗い室内が一瞬照らし出された。

浩一の背中からでもわかる。


絶望とストレスと空虚さが。



「…っ。4ヶ月ぐらい」

「今の今まで…騙されてたって事か…」

「でも…っ」



「言い訳なんて聞きたくねぇんだよっ!!」




急に響いた怒鳴り声。

まるで、空の稲妻みたいに私の体にビクッと電流が流れた。


確かに言い訳だ。


最初はそうだったかも知れないけど、後は監禁されてました、なんて…


信じてもらえたとしても私の過ちは消えない。





「ごめんなさい…」




謝って済む話じゃない。


私は


浩一を傷つけた。



浩一からもらった「話がしたい」ってメール、内容はやっぱり離婚話なの…?






「ごめんなさい…、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめ…」





泣くな私。

怒鳴られても詰られても仕方ない事。




「寂しかったのよ!!

浩一は私の作った料理を1度だって誉めてくれた事なんてないし
休日に一緒に映画を観ることすらなくて

私はいつもいつも寂しかった。

でも、徹は
そんな私に女としての喜びをくれたの…。

でも、本当は━━━━━━━━━」




徹は私の手料理を満足そうに食べてくれた。

私の趣味に付き合ってくれた。

何もかも、浩一にないものを持ってた。



でも、本当は



いつかの喫茶店で結婚話や離婚話が出た時に確信したのだ。



私には、浩一しかいないのだと。




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