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揺れる心
第8章 突然のさよなら
のんびり手を繋ぎながら歩いてスーパーに行く。
日曜日の朝で、
車も殆ど走っていないけど、
歩道の内側になるように歩いてくれる。


「ナンは釜がないから焼けないかな?
おっ。ナンも売ってるんだ。
焼くだけのヤツか。
鶏肉は…どっちが良いのかな?
それと、タマネギとニンニクと生姜と…。
バターはあるよね?」と言いながらカゴにポンポンと食材を入れていく。

私はヨーグルトと果物を選んで入れる。


スーパーの出口にある小さなお花屋さんで、
「そうだ」と呟いて、
陸也さんは淡いピンク色の花を買うと、
「はい」と私にくれる。


「あの中で、一番真理子さんぽい花。
薔薇だよね?
えっ?違うの?
フリフリの花弁、たくさんあるから…
トルコ桔梗?
そうなんだ」と言って笑った。


「ありがとうございます。
お花、凄く嬉しい」と言うと、

「嬉しいなら毎日、
お花、あげたいな」と言った。


帰宅すると手際良く、
短時間でチキンカレーを作ってくれた。

私はフルーツをカットしてヨーグルトに添えた。


私の方にはバターを多めにしてくれたみたいで、
マイルドな辛さだった。


「凄い!
本格的ですね?」

「毎日、これだからね?」と笑う。

食卓には花。
ランチョンマットを敷いて、
向かい合って誰かと取る食事。


私は、また、
泣いてしまっていた。


「真理子さん、大丈夫?
辛すぎた?」


私は首を横に振って、
涙をそっと拭った。


「誰かと食事取るの、
久し振りで…」


「こんなので良ければ、
毎日作るよ?
これしか作れないけど」と言うので、
笑ってしまう。


食後にまた、
温かいチャイを淹れてくれて、
ゆっくり時間を掛けて飲む。


「いつまで…日本に?」


「んー。
急に帰国したからね。
そんなには居れないかな?
でも、真理子さん、心配だな。
独りに出来ない」


「私…
星を見に行こうかな?」


「えっ?」


「決めました。
陸也さんに甘えさせて貰います。
それで…
星を見に行きます」


そう言って、にっこり笑うと、
陸也さんは少し驚いた顔をした後、
「うん。
びっくりするほど綺麗な星、
見せてあげるよ?」と言って、
そっと手を握った。


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