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近くて遠い
第1章 雨に打たれて
冷たい風を身体に感じながら、


放課後という未知の時間を楽しむ高校生をじっと見つめた。




楽しそうとか、私もああいう風になりたいとか、そういう月並みな事は思わなくなった。



私はあんな風にはしてられない…




思うのはそれだけ。



悲しみも絶望も通り越してただ無心に働いてお金を得る。



「藤木さん、はい、これ今日の分。」


「ありがとうございます…」


渡された封筒を握りしめてひとまず安心した。



「若いのに大変だねぇ」


少し小太りのおじさんが私を憐れんだ目で見つめた。



「いいえ、大丈夫です。」


少し笑って私はヘルメットを取り頭を下げる。


大変なんて…私に思っている暇はない…



「日雇いの工事現場に若い女の子が来たのははじめてだよ~」


おじさんはそういって、お茶を飲み干した。



「私も工事現場は今日が初めてです。」


休憩所の時計をチラと見る。


もう23時…


お母さん、ちゃんと寝たのだろうか、隼人は用意したご飯を食べただろうか…



「そうなのかぁ…まぁきつい仕事だから、ほどほどにね。」



「はい…、ではすみませんがお先に失礼します。」


適当に話を済ませて、作業着から着替えると、私はただ財布と日当の入ったカバンを持って、帰宅した。
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