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嵐の夜に痕をつけられて
第4章 つけられた痕
翌朝目が覚めたとき、昨日のことは全部夢だと思った。

亮太とサヤちゃんの関係も、私のことを2人で笑っていたのも、相沢さんに抱き締められてキスをされたのも。

でも鏡を見てやっぱり夢ではなく現実だと思い知った。


左の鎖骨の下には小さく赤い痕が残っていた。


たまたまホクロの上につけられたせいか、この身体を見慣れている私にはホクロが少し大きくなったようにしか感じない。

でも間違いなく相沢さんの痕だ。
思い出すだけで身体が熱くなる。

と同時に、次に彼と会ったときにどんな顔をすればいいのか分からなくて頭を抱えた。
相沢さんとはフロアも違うから顔を合わせることは滅多にない。
滅多にないが全くない訳ではない。

事務連絡や書類のやりとりもある。
不意打ちで会った時が困るのだ。
それは相沢さんと同じ部署の亮太も同じだった。

そこまで考えて亮太への未練が一ミリも残っていないことに気付いた。

会社で亮太の顔を見ることが全く気にならない。
どうでもいいとすら思えている。
二年も付き合って、あんなに好きでたまらなかった人なのに。

本当に亮太のことを忘れてしまったみたいだ。

たった一度別の人と、しかも半ば強引にキスされただけで元カレへの未練が消えた。
私は自分が思っていた以上に簡単な女だったみたいだ。

相沢さんと会いませんようにと祈りながら出勤し、会社のエントランスを足早に通り抜け自分のオフィスへと向かった。
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