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嵐の夜に痕をつけられて
第2章 元彼と雨
亮太? こんな所で何してるの? 
思わずドアに近寄って隙間に耳を寄せる。


「もう! 降り出す前に早く帰ろうってば」

「いいじゃん、ちょっと興奮しねぇ? 
 会社でこういうことすんの」

「するけどさぁ、誰か来たら困るって」

「もうほとんどみんな帰ってるって。
 俺ちょっと会社でこういうのやってみたかったんだよね」

「立川さんとはしなかったの?」

「恵? あいつがこんな事するわけないじゃん」

「へぇ、真面目なのねー」

「真面目なだけでつまんないよ。
 スタイルは悪くないけどキスもセックスも下手だし」

「二年も付き合ってたのにひっどー。
 何が良かったの?」

「仕事のフォロー。
 めんどくさいことは頼めばやってくれんの。
 でも別れちゃったからなぁ。
 だから俺のこと慰めて」

「あはは! サイテーじゃん」

「でもサイテーな俺のことが好きなんでしょ?」

「ふふ、しょうがないなぁ」


ドア越しに聞こえる二人の音を聞きながら、指先が冷えていくのが分かった。

足音を立てないように、そっとその場を離れる。
デスクに戻りながら亮太の言葉が頭の中で繰り返す。

真面目なだけでつまんない。
キスもセックスも下手。
めんどくさいことをやってくれる。 

そうか。
亮太は私のことが好きで付き合ってたんじゃなかったんだ。
私が一人で愛されてると思ってただけなんだ。

ああ、なんて私は……。
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