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ノーサイドなんて知らない
第4章 あちこちに波及するけど、大丈夫かな?
羽田の到着ロビーでのんびり本を読みながら待っていると、
30分ほどで熊野さんたちがゲートから出て来た。


ファンみたいなヒトたちから、
歓声が上がるので、
私はびっくりしてしまって、
少し離れた処に思わず移動してしまった。



携帯が震える。

「茉莉(めあり)、何処に居る?」と、
ゆったりした熊野さんの声がする。

「えっと…ファンみたいな方がたくさんいらっしゃって、
ビックリしちゃって…」

「他のヒトなんて、どうでも良いよ。
駿さんとか、他の選手のファンもたくさん居るし。
茉莉(めあり)、俺の顔、わかんないから、
俺が探すから。
何処に居る?」


「ゲート出て2時の方向の端っこです」


「ん。
見つけた。
待ってて?」
と言うと、
熊さんの行列から1人、離れて私の方に向かってきて、
軽く手を上げた。


「お待たせ。
車だからあっちね?」と言って、
手を繋いでゆっくり歩き始める。


「あの…。
手なんて繋いで大丈夫ですか?
ファンの方とか…?」


「茉莉(めあり)が迷惑なら、
止めるけど、
俺は平気。
チームの奴らにも、
彼女だって言ったし」と笑う。


駐車場で、
大きなジープを指差して、
「これなんだけど、
乗るの、手伝うね?」と言って、
「ここに脚を掛けて?
そうそう」と言って、
軽く押してくれる。


ドアを閉めようとしてくれてる処に、
2人組の男性が近付いてくる。

「○○社『××××』編集の者なんですけど?
熊野さん、ちょっと良いですか?」と言って、
1人がカメラを向ける。

…ん?
試合の後、
熊野さんの調子が良いって言ってたヒトの声?


「申し訳ないけど、取材は会社の広報、
通していただけますか?」

「そちらの女性は?
彼女さんですか?」

「プライベートなことなんで。
あ、一般人なんで、
写真撮らないでください」と、ドアを閉めてくれる。


運転席から熊野さんは車に乗り込むと、
「ごめんね。
不愉快な思い、させちゃって」と言って、
「カメラマンそっち側に居るから、
俺の方、向いてて?」と言うと、
クラクションを鳴らしてから車を出した。


暫く無言で車を走らせていると、
ミラーを確認して、
「もう、大丈夫かな?
流石に追いかけてはこないかな?」と笑った。



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