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第12章 幸恵

ドアを閉め、男が帰ってきても勝手に出入り出来るようにカギを母と暮らしていた実家と同じく郵便受けに隠し、さて何処へ行こうかと考えてハタと気づく。

(お金がないわ…)


キャッシュカードもクレジットカードも、男が持っていった財布に入れたままだ。
通帳と印鑑はあっても窓口はとっくに閉まっている。


現金がないとなると徒歩で行けるところまで行くしかないが、泊まる所はどうしよう？
幸恵には、急に訪ねて泊めてくれるような知り合いはいなかった。