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第12章 幸恵

「え、ええ…大丈夫」

「こんな時間にどこへ行くんだい？」

キャリーバッグに目を落とし、優人が尋ねる。


「あ…あの、じ、実家の母が具合が悪いらしくて…」

咄嗟についた嘘だが、言葉にしたとたん本当に故郷へ帰ろうかという気持ちになってきた。

「連絡しなくてごめんなさい。そういう訳だから、しばらくアパートには帰れないと思うの」