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特別棟の獣
第15章 離れる心
何度呼んでも百合は俺の方を見ようともしない。


声を掛ければ帰れって言われるし…


でもこんな弱った百合を1人になんてできるわけない。


「分かった、薬と水置いておくから飲んで」


そう言ってリビングに戻った。


俺がいたら百合が嫌がるし、とりあえず薬は飲まないと熱も下がらないだろうし何より今の百合を見れられない。


少ししたら様子を見に来よう。




リビングのソファに座ってスマホを取り出し、來に電話をかけた。


なんで來が百合の体調が悪いことを知ってたのか気になってしょうがない。


『誤解とけた?』

「は?」

『なんだ、違うの?』


何の話だ?

誤解…?



「つか、なんで百合が風邪引いてるって知ってた?こそこそ連絡取ってんの?」

『なんでそうなるんだよ、今日たまたま会ったんだよ』


百合と來が?

どこで会うんだよ。


『ごめん吏生さん、俺百合とキスした』

「お前、それがどういうことか分かってんの?」

『って言ったらどうする?』

「再起不能似してやるよ」


何言ってんだ?



ヤバい、キレそう。



今日は厄日かってくらい負の連鎖が続くな。



『じゃあ他の女とキスしてた吏生さんを見て百合はどう思ったんだろうな』

「は…?」

『もう分かんだろ?あれが女が無理矢理したのは俺でもわかるけど、百合はすぐ目を逸らしてたから吏生さんが女を怒鳴ってたのは見てないし変な誤解してる。早く言わないと拗れると思うけど』


マジかよ……

あわよくばあんな事記憶から抹消したいくらいで、百合に話そうなんて思ってなかった。


変な心配させたくなかったし、あの女は何度も邪魔してくる。

そろそろ俺も痺れを切らしていたところだった。
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