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特別棟の獣
第6章 開き始める心
「このマンションなので…、送ってくれてありがとうございました」

「百合ちゃんちってお金持ち?」

「え…?」

「大学生が一人暮らしするには高級過ぎない?」

「親が心配性で…、セキュリティがしっかりしているところを選んだって言ってました」


これは嘘じゃない。私はもっと安いアパートでいいって言ったけど、お父さんは心配性だから無理矢理このマンションを選んだ。

吏生さんは「そういう事ね」と何も疑うことなく私にバッグを渡した。


でも繋がれた手を離してくれないから、なんだろう?と思って顔を上げると「連絡先教えて」と言う。

どうせいつかは聞かれると思っていたし、私に拒否権なんて無いだろうと番号を教えた。

「じゃあまた明日ね」と私がエントランスに入るのを見届けると、吏生さんは来た道を戻って行った。


学食では私の分のお盆も持ってくれるし、講義が終わるとわざわざ教室まで迎えに来てくれるし、今日は家まで送ってくれたし、酷いだけの人じゃないのは分かったけど…


あの人は私をどうしたいんだろう…
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