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おっかない未亡人
第1章 グレイなふたり
槻と二人で夕食を囲む

「槻ちゃんが居てくれて良かった。」

「それにしても松下さんは酷いよ。さっちゃんほぼ尽くしてきたのにさ。」

はぁー
ため息が止まらない

槻はこれから夜勤らしく急いで食べている

「たくましいね。」

「何が?」

「あたし人に注射とかできないよ。」

「慣れだよ慣れ。あ、もうこんな時間!さっちゃん車貸して~。」


二人で玄関に行く

「じゃ、行ってくるね。戸締まりしっかりね。」

娘には頭が下がる

槻がドアを開けたそのとき
目の前に人影が現れる

「きゃっ!」

槻が叫ぶ

「悪い、驚かすつもりはなかったんだけど。」

関本だった

「こんばんは。」

幸子は仕事モードに戻って挨拶をする

槻は呆然と立ち尽くしていた
無理もない
体は幸子ではあったが一夜を共にした相手なのだ

「娘さん?こんばんは。」

何も知らない関本は大人の挨拶をする

「あ、、ああ、、。あたし行かないと。」

槻は素っ気なく出ていった

「ごめんなさいね、人見知りで。」

母親らしいセリフが咄嗟に出てくる
入れ替わった際にあなたと寝たのは娘の方です
とか今更説明しても信じてもらえなさそうだ

「僕こそ遅くにごめん。明日渡そうか迷ったんだけど、明日の取材の資料。一応目を通しておいてほしくて。」

関本は三原に線香をあげに一度家に来たことがある
今回の訪問も全然歓迎なのだが
今の幸子は複雑な気分だった

三原に先立たれ松下に振られた今
関本とどうにかなっても
誰にも後ろ指を指されない

どうぞお茶でもとか言うべきか

「じゃ、また明日。」

関本がさっぱり挨拶をした

「あ、あの、」

「ん?」

「良かったらお茶でも、、。」

「ああ、、。明日6時起きだからなぁ。三原さんと違ってご老体だからさ。」

「ふふふ。そんなに歳変わらないじゃないですか~。」

幸子もお決まりのフォローをする
関本の自虐発言も幸子はなかなか気に入っていた
品があるからこそ粋に聞こえる

「じゃ、お疲れ。」

背中を見送る

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