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彼女はただ満たされたい
第2章 彼と彼と私
 私はもう選んでいるのに。そう思いながら頷いた。
 誰だって足りないところがあるのは当たり前。それを擦り合わせて受け入れて、妥協点を見つけていくのが恋人なんじゃないかと今更思う。
 健司と向き合えず性に対する不満を溜め込んで、抜け道を提案されたら促されるままに私は行動した。自分の欲に忠実に、二人の気持ちを考えないようにして、好かれていることに甘えていた。二人にちゃんと向き合ってこなかった。
 自分のことだけを考え逃げてきたツケはいつか返ってくるかもしれない。でも、これからはちゃんと向き合おう。人に胸を張って話せる恋愛をしようと私は決めた。

 車を走らせて健司は自宅に向かった。
 玄関から私の手を引いて、健司はまっすぐにベッドに向かう。
 薄暗い部屋のベッドの上で私の服を脱がせて、健司も服を脱いだ。
 壊れ物でも触るかのようにもどかしく触れられ、キスの雨が降り注ぐ。それだけなのに、割れ目はしっかり潤い、指でなぞられるだけで身体を跳ねさせる程敏感になっている。
 健司はいつもよりも時間をかけて、ゆっくり愛撫をしてくれた。
 ゆっくりゆっくり進むセックスは、内容こそ変わり映えのしないものの、僕だけを選んでくれないかと求められたことが私の心を大きく満たしていた。
 繋がって腰を振り合い、そのリズムも肌の温度も、何もかもが愛おしかった。
 一緒に絶頂を迎え、結局私の欲しかったものは激しいセックスではなく、心を満たすセックスなのだと思った。
「これからはもっと回数増やすから」
 繋がったまま健司はそういった。
「苦手なら無理しなくていいんだよ」
 健司の顔を手で挟んで指で撫でる。
「セックスが嫌いなわけじゃない。本当はもっとしたい……。でも、今までの彼女と失敗ばかりだったから自信がないんだ。セックス指南的なサイトやAVを見ても、目の前の女性を満足させれる訳じゃない。されたいことは人それぞれで、僕はその選択をいつも外してしまう」
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