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第1章 土井社長　～　神戸国際投資顧問会社の秘密

　「オフィスメイドのことは、秘密に気をつけてますから、当然、本人にはまだ何も話してないんですけど、きっと説得できると思います。そのためにも、彼女に話をする前に、社長によく見てもらいたいと思いまして。彼女が自然に振る舞えるように、まずは、ご贔屓のお客様として、店にお越しいただいた時にアフターに付けますから。・・・うふふ、実技試験をお願いします。」

　「ママが見込んだのなら、実技試験はいらないけど。まあ、一度、食事でもしながら話をしてみよう。どんな娘（こ）なんだい。」

　「吉村麻衣ちゃん。スタイル抜群で、アフターの時のベッドマナーやテクニックも評判がいいんですけど、とにかく、性格が、おっとりというか、控え目と言うか。神戸のソープにいたんですけど、クラブホステスの方が、長く続けられるからということで、うちに来たんです。でもね、そろそろヘルプを卒業して、歩合制で一本立ちさせようとしても、人を押しのけてもというのが苦手なんですよ。」　綾子は、土井の肩から、頭を起こして、話を続けた。

　「ヘルプのままでは、北新地で長くやっていくのが難しいことは、社長もご存知でしょう。さっき＜身の上も考えて＞と申し上げたのは、彼女、高校生のころまでに両親とも病気で亡くなりましてね。祖父母も他界しているので、一時は、遠縁の家に身を寄せたんです。でも、障害のある弟がいましてね。居辛くなって、そこを出て、今は一人で面倒見てるんです。社長のところで、オフィスメイドが出来れば、弟さんの将来のためにも、ある程度の余裕ができるんじゃないかと思ったんです。」